Phase2の目的
前回のおうちのカーボンフットプリントを測ったのが、2022年1月(Before)と2022年3月(After)。こちらのブログに結果をまとめたのが、2022年9月。 ←作業が遅い。。。
当時、IGES発行のレポート ↓ を参照して計算して、諸々の対策で11.5%の削減はしたものの、「カーボンフットプリントを測定する」ということに関してはちょっとモヤモヤが残ったままでした。(Phase1の詳細はこちら)
1.5°Cライフスタイル― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ―
IGES 公式ホームページより
https://www.iges.or.jp/jp/publication_documents/pub/technicalreport/jp/10464/1_5_report_A4_FINAL_REPORT_j_web.pdf
もやもや その1:計測の項目が粗すぎる
たとえば、、、肉の例。
Phase1での ”肉” カーボンフットプリントは、買ってきた牛肉、豚肉、鶏肉、など全部まとめて”肉” (排出係数 8.25 kg-CO2eq) の項目として計算してました。
がご存じの通り、肉の種類によっても排出量が大きく異なるという現実が。
1kgの牛肉ができるまでに出るCO2 約 16 kg
豚肉だと 約 4 kg
鶏肉だと 約 1.6 kg
はかって、へらそうCO2 1.5℃大作戦 ②へらす編 p31
出るといわれている。
まだまだ日本では商品にカーボンフットプリント表示がされている商品があまりないので(というか私は個人的にこの1年くらい買い物の時気にしてみたが、見たことがない気がする)
商品ごとに表示された1次データを足していくと排出量が出る、というところまではムリでも、せめて2次データ(統計値)でもうすこし項目を増やして計算しないとな、、、と思っていました。
もやもや その2: もうExcelはいやだ。
結局、Phase1 の方法を続けるには、食料を買えばその重さを測り、日用品・サービスを購入すればその金額を記録し・・・という地味すぎる作業が続くわけですが、、、半年ほどがんばったものの、さすがにもうイヤになりました。
「何かいい方法ないかなー」と思って、展示会とか、ネットとかぐるぐるしていたら、最近カーボンフットプリントを測る系のアプリやツールが増えてきたので、
- そこそこの精度が出て
- カンタンに計算できる
ツールに引っ越そう!と決断したのであります。
(というか、最初から気づこうよという話だったのやも)
もやもや その3: せっかく受講した 「再エネ電力&脱炭素プロジェクト推進リーダー養成講座」・・・
企業の温室効果ガス排出量をはかるのに使われている『GHGプロトコル』 を使った測定方法を、有料講座で教えてもらったのが2022年7月。「せっかく習ったんだから、家でやってみよう!」と思ったまま、はや xか月が経過しました。
どうせ話聞いただけだとすぐ忘れちゃうので、”まついの家” を 小さな企業、にみたてて計算する& 内容を復習する。 がいつまでも残タスクとして残っておりました。
そんなこんなのもやもやを一掃すべく、Phase2に踏み切ることになりました。
Phase2でこんなことやってみた!
そこそこの精度で、カンタン、楽しくカーボンフットプリントを計測し続けられる、アプリ・ツールの発掘をします。
これで毎日の細かい計測・ログ付けからも解放される、はず!
段取りはこんな感じ。
カーボンフットプリントを測れるいけてるアプリ、ツールの選定方法
評価するのが私1人なので、「好き」とか「イケてる、イケてない」という主観を排除するのはなかなか難しいところではあります。
あんまりフェアじゃないのもなあ、、、ということで、評価項目と評価方法を事前に決めてみました。

ベンチマークデータの準備
講座で習ってきたGHGプロトコルにのっとって、家庭でも関連のあるカテゴリーを選んで計測しました。
ちょっと薄くなっているところは、家では関連なさそうなところで実証実験 Phase2で測定対象外 としたところです。

計測対象:まついの家 (大人2名、小学生1名)
ここはPhase1とかわらず。
期間: 2022年10月
とりあえず、冷房も暖房もなく排出量が一定しそうな10月を対象にデータを計測
GHGプロトコルによるベンチマークデータの算定のしかた
- スコープ1
月間都市ガス利用量(㎥) データ数1
排出係数は 環境省 算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧 を利用 - スコープ2
月間電気利用量 (kWh) データ数1
排出係数は (株) Looop 環境価値電力についての実績記録書 の記載数値 - スコープ3 排出係数は IDEA v3.1 データベースから、LCIA結果>気候変動の数値を利用した
- カテゴリー1 購入した 製品・サービス
購入品目と購入価格(食料品については重さも) データ数 504+50
公共交通機関、カーシェアなどでの移動も、こちらのカテゴリーの”サービス”として計算しました
(カテゴリー4,9のトンキロ法だと、「私 何トンだっけ?」みたいな不思議な感じになってしまったため) - カテゴリー2 資本財
家くらいなのですが、、、こちらの記事で、Scope3 カテゴリー2 資本財においては、「取得した年に購入した資本財の総排出量を算定することが望ましい」 との記述。
「自宅もそれでいいのか?買ったときにものすごい数になるじゃん!」ともやもやしつつ引っ越し後数年が経過しているため、今回は家の建築に係わる排出は算定対象外に。
家の維持にかかわる 管理費、火災保険などの保険料を対象として算定 データ数2 - カテゴリー5 廃棄物
ごみの品目と捨てるときの重さ データ数 38 - カテゴリー15 投資
耳くそくらいの株を対象に、(家族の持ち株数)/(発行株式数) で対象企業のGHG排出量(2021年度)を割り戻し データ数1
- カテゴリー1 購入した 製品・サービス
GHGプロトコルで算出した結果
2022年10月分(月間、実測値)
599 kg-CO2eq /月・人
年間排出量(予測値)
7,625 kg-CO2eq/年・人
年間排出量(予測値)の算出前提
- Scope1、Scope2については、2022年の消費量(実測値)を利用
- Scope3については、10月の値を12倍に + 旅行分として飛行機での移動を追加(東京-沖縄 往復 x 2回分)
感想
よかったこと
GHGのプロトコルがどんなものか、実際手を動かしてみたぶん理解が進んだ気がする。
手あたり次第、いろんなアプリ・ツールを試してみた! (結果は表の記事をご覧くださいませ)
もやっとが残ったこと
計算方法や排出係数の選び方があっているか、の自信がないところが残る。気になったのはこのあたり。(多いなー)
- 多くの排出源がScope3で、排出係数はIDEA v3.1の数値を使うことになったが、マニュアルによるとデータの基準年は2015年らしい。7年たつと色々変わっているやもしれない
- 自家用車がなく、ハイブリッドの車をカーシェアで借りているが、うまいこと車種やサービスで当てはまるものがIDEAのデータベースでなさそうだった。
433112000pJPN 乗用車輸送サービス, 自家用軽自動車(人km)
で計算しちゃったけど大丈夫か・・・年間7104 kmの想定になるため、係数によっては結構幅がでそう - とくに食べ物とかは、産地や時期でフットプリントが大きく変わることは知られているが、統計値・項目の制限で排出係数の数字上で区別があるものは極めて少ない。
がんばって地産、旬のモノを買ったとしても、数字に反映するすべがない。
(参考)
”イチゴ1パックは旬の時期なら、150ですが、季節外れに空輸されたものは1800に跳ね上がります”
<出典: 『SDGsな生活のヒント』 タラ・シャイン 著 p23> - こちらの記事で、Scope3 カテゴリー2 資本財にあてはまる 自宅 については、「取得した年に購入した資本財の総排出量を算定することが望ましい」 との記述で算定対象外にしちゃったが、居住用の自宅のカーボンフットプリント算定の方法として、それが正しい(もしくはマジョリティーの)方法だったのか? 建築による排出量(とくにコンクリート、鉄)は多いことが知られているし、個人の買い物としては購入額も大きいので、算定の仕方で大きく結果が変わる可能性がある
- (結果の数字が小さいので大勢に影響はないものの)
大田区では、プラスチックごみの処置は2022年10月時点、サーマルリサイクルのため、プラスチック系資源ごみはすべて、焼却処理+発電ありとして分類 (プラスチック容器、製品のリサイクルについては実証段階)だったため、PET、トレー、発泡スチロールは全部 IDEAの
881612204pJPN 焼却処理サービス, 一般廃棄物, 廃プラスチック
で計算しちゃった。
ということで、色々書きましたが、GHGプロトコルのプロでもなく、排出係数のデータ(統計値)も実際にやってみると制限があって、あくまでベンチマークのデータは 参考値 程度になりました。
アプリ・ツール評価についても 1)データの正確性は 参考値 として扱います
ここまで手間かけたのに―(涙)、という感じはすれど、でもやってみないとわからないものなー。
これ以上を望むのであれば、
- 条件の違う複数世帯のデータで評価してみる (←でもどうやってこんな面倒な作業を協力してもらうんだ・・・)
- 季節ごとに測りなおしてみる (← もう一回頑張れるかな・・・自分。。。)
など複数のデータポイントで比較するくらいしか思いつかない。でも、やったところで排出係数の問題はどうにもならないしなあ・・・
究極的には製品・サービスごとの1次データで積み上げないと、ホントにリアルなところはわからないのやもしれないですねー。
~ ご参考情報 ~
環境省
温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度
Scope1の排出係数を参照
セミナー資料
GHGプロトコルの図表借りて作成
株式会社ゼロック HP
【Scope3】カテゴリー2の算定方法・事例について解説
建設 に関する算定方法について参照
はかって、へらそうCO2 1.5℃大作戦
② へらす編
絵本ながら、いつも「どうだったっけな」と調べるのに便利。今回は肉の種類による排出量の違いの部分を参照させていただきました。

SDGsな生活のヒント タラ・シャイン 著、武井摩利 訳
気候変動だけでなく、生物多様性、人権・格差、サプライチェーンなどいろんな視点から、日々の生活で活かせるアドバイスが凝縮しています。
キッチン、ベッドルームなど生活の場所ごとに分かれているので、気になるところからランダムに読めるのもよいです。良著。

実証実験Phase2 「たのしく測る & 削減する」で検討したアプリとツール
表記事「おススメ!カーボンフットプリント計測 アプリ/ツール 3選」でイチオシとして紹介した、Carbon Donut、 アースヒーロー、じぶんごとプラネットの他、こちらのツールも触ってます。
「こっちの方が良いじゃん」という方もいらっしゃるかもしれないので、一言紹介とリンク載せておきます (順不同← 見つけた順だから)
- Becoz Wallet
言語:日本語
質問項目への回答だけではなく、日常使っていらっしゃるカードが セゾンカードであれば、カード情報と連携して自動算定できるそう。セゾンユーザー 必見 - change
言語:日本語
山形大学の方がカーボンフットプリントの算定にもかかわってらっしゃって、オフセットのために少額で再エネ発電に投資できる!という尖ったコンセプトだったのですが。。。ブログ書く直前に残念ながら破産申告の記事がでました。。。スタートアップって大変なんですね。。。 - Capture
言語:英語
食や交通などで日々削減できた分を計算するアプリのようです。日々の生活で排出した分を、アプリからクレジットを購入してオフセットすることもできます(アメリカの森林保全やパナマでの植林、再エネ電源の整備など世界のプロジェクトが掲載されています) - CF Calculator
言語:タイ語と英語
なんと!タイの Thailand Greenhouse Gas Management Organization が作成したアプリが日本でもダウンロードできました。ものすごい家電とか照明の入力項目が細かかったり、、、お酒の項目がなかったり・・・タイの人はあまり飲まないんだろうか・・・もしくは飲まない人が作ったのかな。お国柄や文化がにじみ出てたのしいです。 - Decarbon
言語:英語
銀行の口座を登録すると、日々の支出の内容から排出量が自動計算されるしくみ(と理解しております・・・)。連携できる口座が『PLAID』なるプラットフォームに対応している米国っぽい銀行ばっかり、かつ一件一件手で支出を入れるのも相当大変、なので今回は見送りました。排出量低減のためのアクションや、クレジットの購入もアプリ上で可能です - Klima
言語:英語
質問に答えていくことで、年間の排出量が計算できる & オフセットのクレジットが買える仕組みです。 チーム用サブスクリプション(Team Subscription)を購入すると、ビデオコンテンツやガイダンスなどの情報、コミュニティなどに参加できそう(未確認) - Pawprint
言語:英語(だったと思う)
2022年9月に見つけたときは、しろくまモチーフでカワイイ画面こうせいで「きゃ🎵」と思ってメモっておいたのですが、年が明けてアクセスを試みたら真っ白になってうまくいきませんでした・・・アップデートがかかったころもう一度試してみます - Carbon Footprint Calculator
言語:だいたい日本語
ブラウザーベースでタブごとに回答していく方法と、Excelダウンロードして入力・計算する方法と2つ計算方法があるツール。「だいたい日本語」 の意図は、モノやサービスの消費に係わる”Secondary”なるタブだけがなぜか日本語だったから。Excelダウンロードで試みましたが、排出係数が2010年のデータみたいなので、今回表ページへの掲載は見合わせました。 - カボニューレコード
言語:日本語
NTT docomoさんがやっている”脱炭素型のライフスタイル”を推進する事業 『カボニュー』の一環で、週次での削減量をログしていくしくみ。Docomoの5G、グリーン電力、dショッピングのグリーン商品購入、dヘルスケアなどのサービス+日々の取組みに関する質問に答えることで削減量を計算しているようです - 炭素家計簿
言語:日本語
企業の排出量算定やコンサルをしているTech Thinkerさんが提供している、個人のカーボンフットプリント排出量算定用のツール。まついが2月に試したときはα版でした。入力方法はすべて金額ベースなので、家計簿とかしっかりつけている人向けかも。 - Doconomy
言語:英語
スウェーデンで2018年に設立されたClimate Tech、Fin Techの会社です。企業向けの算定ツールはS&Pのデータを使っており、ヨーロッパを中心に多国籍企業で多く使われているそうです。
個人用のこちらのツールも、入力画面や結果の表示画面などが洗練されており、一日の長を感じさせます。なぜか算定量がものすごく低く出ており、、、今回原因までたどり着けなかったので、表ページへの掲載は見合わせました。 - Global Footprint Network
言語:英語
質問に答えていくと、自分の生活のために必要な地球は何個分か? を出してくれるアプリ。こないだ、米国の大学を卒業された方からこの地球何個分というワークショップを大学でされたことがあるとか、日本の高校の先生も同じような授業をしたことがあるとのこと。わりと学校では今メジャーなやり方なのかも。 - WWF Footprint Calculator
言語:英語
おなじみ生態系の保全の活動をしているWWFも、気候変動対策に関する多くのプログラムを展開しており、こちらの個人向けカーボンフットプリント測るツールもその一環です。
がっつり質問があり、カバー範囲も素晴らしい。どちらかというと「測る」ことに特化したツールかなと思います。
本日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございました!
本当に、、、このカーボンフットプリントを測るテーマは、やればやるほど沼にはまっていく感じがあり、ぜひ詳しい方いらっしゃればコメントや「ちがってるよ」の一報などいただけるとありがたいです。
Have a good and eco day!