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【地球のしごと大学レポート】#17 循環型社会のOS「ゼロウェイスト」

2023-02-08

地球のしごと大学 教養学部 最後のレポートになります。 徳島県 上勝町の「ゼロウェイスト」の講義です。

地域の廃棄物リサイクル率 81.1% ! 全国に先駆けてゼロウェイストに取り組んでいる自治体ということで、以前からお名前はよく聞いていて、どうしてもどうしても行きたかった場所。

2022年6月に地球のしごと大学の受講を決めたのも、この上勝町でのフィールドワークが決定打でした!

今回の先生は、合同会社パンゲア CEOの野々山先生。なんと!米国に留学して宇宙飛行士をめざしていたこともある方です。
2022年12月頭に
循環型社会のOS「ゼロウェイスト」について、徳島県上勝町の取り組みから学ぶ
と題して、ご講演と施設のご案内をいただきました。

まついは無理やりの日帰り弾丸ツアーになってしまったため、大分こころに余裕がなかったのか、写真がボロボロなのが残念です。
一部、公式HPや公式Twitterの美しい画像をお借りして、お届けします!

上勝町(かみかつちょう) って、なんか聞いたことがある気がする

という方も多いはず!
2022年12月現在で、町民の数 1,425名 = 渋谷のスクランブル交差点一回分で通る人の数と一緒、という山間の小さな町ではありますが、全国区でテレビ、新聞などにも沢山でているとても有名な町です。

有名ポイント その1 - 葉っぱビジネス 「いろどり」

ほとんどの家が山を所有していて、四季折々のいろんな葉っぱが採れる、という上勝町ならではの資源を活用した「葉っぱビジネス」。高級料亭などでつかわれる 妻物 (つまもの)用の美しい葉っぱや芽、枝などを出荷していて、国内シェア はなんと6~7割です。多い人では年間2000万売り上げるという、町の一大産業になりました。

「葉っぱ受注システム」も自社構築していて、おばあちゃんたちがパソコンの前を陣取り、競って受注しているのをテレビでご覧になった方も多いのではないでしょうか?
(今ではシステム自体はKintoneに移行しているそうです。イマドキです)

1999年当時 農協職員だった横石さん(現 株式会社 いろどり社長)が、林業衰退 ー>みかんの木が霜で全滅 となった町の厳しい状況から、起死回生の一手として思いついたのが始まりでした。


当時画期的だった受発注のシステム化や高シェア、高収入で注目をあつめていますが、事業立ち上げの前には 経費ではなくご自身の給料をつぎこんで 料亭通いをし、売れる妻物の調査をしていたそうです。そのせいで横石さんは体を壊したり、最初賛同してくれた農家はたった4件だったり、たくさんの苦労を乗り越えてのスタートだったそうです。(そんなご苦労があったとは・・・今回初めて知りました。。。)

今もかわらず、町一番の稼ぎ頭です。

現在は、山をもつ町民の方だけではなく、あたらしい「葉っぱビジネス」の担い手を育てるべく、
-2年間 町の農家さんで実習
-3年目~ 廃業された方の山を借り受けて独立
するプログラムを実施しているとのこと。

有名ポイント その2 - ゼロ・ウェイストの町

上勝町は 2001年 日本で初めて ゼロ・ウェイスト を宣言した自治体です。


取組みを始めてから20年を経過した今では、 廃棄物の81.1%がリサイクルされるまでに! 残りの18.9%である、①ゴム素材、②複合素材、③保健衛生用品(マスク、生理用品、おむつ)などのリサイクルについてもメーカーと協力し果敢に実証実験されています。

上勝町 ゼロ・ウェイストセンター WHY を見学!

全景

こちらがゼロ・ウェイストセンター WHYを上からみたところ。WHY 名前にふさわしく、全体は はてなマークの形をしています。

2020年5月30日(#ゴミゼロの日)ここ徳島県上勝町に、環境型複合施設『上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY』がグランドオープンしました。

『上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY』は、ものを捨てないデザインや、捨てたものが生まれ変わる仕組みづくりを社会の中で取り組むべく、上勝に集まる様々な知見を活かし、相互に助け合いながら、ごみ問題の解決に立ち向かう場所です。

「WHY?」という疑問符を持って生産者と消費者が日々のごみから学び合い、ごみのない社会を目指します。

(c) Kamikatsu Zero Waste Center, HP 公式Instagram より
  • くねっとしているあたり ー リサイクルエリア
    資源ごみをいれるエリアと、保管場所になっています。分別はなんと 45分別!です。

  • まんなかのまっすぐな部分
    まだまだ使える不要品を無料で提供している くるくるステーション、交流エリアがあります

  • ドット部分
    HOTEL WHY という宿泊施設になっていて、町民の方以外でも一泊のくらしやごみの分別などを通して、ゼロ・ウェイストの暮らしを体感できます

リサイクルエリア

町民の方がこちらに資源ごみをもちこみ、表示にしたがって分別していくしくみです。営業時間には、町役場のご担当者もいて、「これどこに入れるの?」といった質問に答えてくれます。

で、ですね。

45分別すると、どんな感じになるのか。とりあえず、「紙」関連をあつめてみました。

1.新聞紙・チラシ、2.雑誌・雑紙、3.雑紙、4.紙パック(白)、5.紙カップ、6.紙パック 銀、7.やわらかい紙芯、8.硬い紙芯、あと画像は取れてないのですが (泣)、段ボールもありました。
紙関連だけでも8種類です!

ひとつひとつの分別エリアに、ついている札がわかりやすいです。

  • 入れるもの -今回は紙パック(銀) アルミ蒸着してある紙のパック。わりかし日持ちのするジュースや豆乳などにつかわれてたりします。
  • お値段 ーこのアルミ蒸着紙パックはkgあたり5円で買い取ってもらえるので 収「入」マーク
  • リサイクル先 -(徳島県)阿南市
  • リサイクルされるもの-再生紙に生まれ変わります

「これはちゃんと分別したら 5円で買いとりしてもらえるのか」「え、電池って北海道までもっていかなきゃいけなくて、リサイクルに119.8円も払うの!?」などなど。
お金が表示されると、やる気が変わりますね! (私だけでしょうか。。。)

また、「入」の買取価格、「出」処分価格は、年度に1回 リサイクル業者選定の入札があり、価格も市場価格を反映したものに更新されていくそうです。

上勝町の場合は、世帯数が少なく量もすくないので、一定の量になるまで保管します。そのあいだカビなどが生えて劣化しないよう、町民のみなさんは「キレイにあらって乾かす」「なるべく高価買取されるよう、新聞などは紙紐で縛る」など日々努力をされているとのこと。結果として、上勝から出る資源ごみはほとんどがA+、Aグレードなんだそうです!!
日々の皆さんの努力が高価買取、収入増にもつながっています。

くるくるショップ

「まだ使えるんだけどなー、メル〇リでも売れないし、しょうがない」「死ぬほど忙しいのに、ちまちまヤフオ〇してられるか!」っていう感じで、しょうがなく捨てるってこと・・・ありますよね。
こちらのステーションでは、レスキューコーナーがあり、まだ使える不要品をひきとってもらうことができます。(写真左)

そうすると、美しくきれいにしてもらった品々が、となりのくるくるショップにならべてもらえるのです!

「リサイクルショップ」ときいて思い浮かぶ、暗く、ちょっと埃っぽいイメージとは程遠い、すっごくステキなショップなんです。
すべて無料で、町民以外の方も引き取りOKとのこと。太っ腹です。

なにこれカワイイ!!とはしゃいでいる間に、写真を撮るのを忘れてました。自分が残念過ぎる。
くるくるショップの写真は、公式Instagramからお借りしております。

交流エリア

くるくるショップ横の 交流エリアもすごくすてき

もともと木の産地だった上勝町産の木材をつかった柱は、通常の四角い柱ではなく、丸太を半分に切ったもの

こちらも丸太の形を極力のこすことで、端材が出ないようにした工夫なんだそう。

あと、壁が全部バラバラの窓枠なのわかりましたか?

こちらのゼロ・ウェイストセンター WHYのリニューアルが決まって以来、住民の方からでる窓枠の粗大ごみを大事に保管しておいて、新施設の壁材、窓材として活用しています。

なぜ、リサイクル率 81.1%を達成できるのか?

自分の生活や、自治体のリサイクル率を考えてみると、全然81.1%には到達していません。

うちは東京都大田区なので、ざっと大田区のページを確認するも、一般ごみや資源ごみ回収量 は記載されているが、リサイクル率についてはなかなか見つからない。。。
2012年(平成24年度)のデータで、18.5% というのしか、見つかりませんでした・・・これじゃあ、資源循環の取組みも進まないよなあ。。。

なぜ、上勝町は段違いの高いリサイクル率を達成し、かつそれを継続することができるのか!? 野々山先生の講義の内容や実際のとりくみの様子から考えてみます。

Point1 切実な、切実な理由

2001年ゼロ・ウェイスト宣言を全国に先駆けて実施! という話を聞くと、「ものすごく環境意識の高い町なんだなあ」と思いますが、実は「環境に良いからやる」という理由だけでない、もっと切実な理由があったのです。

それは、「お金」

資源ごみの33分別が始まった時の歴史を、すこし振り返ってみます。
2001年からのダイオキシン類対策特別措置法の施行で、上勝町では焼却炉の1基が基準を満たしていないことが判明し、導入からわずか2年しかたっていない焼却設備の閉鎖を決定しました。
しかし、次に困るのは、日々集まるごみの処理。。。近隣の自治体でも処理を請け負う余裕がなく、みつかったのは徳島から遠く離れた山口県の処理業者でした。
コンテナで運んで、ごみ処理をしてもらうのに、 当時 年間 6000万の費用がかかることが判明。町の財政ではとてもとても賄うことができない金額でした。

そこで上勝町のみなさんは、作戦を変更します。

作戦その1: 生ごみ

畑がある人はコンポスト、ない人は電動生ごみ処理機で自宅で処理をする

作戦その2: 資源ごみの現金化

当時33分類した資源ごみを、リサイクル業者に売却することで、ごみ処理の費用を削減する

この作戦決定から運用開始までに残された期間はナント2か月!! 役所の推進メンバーや担当者が、それぞれの地域の集まりや、集会所を回り、町民の方の了解と協力を得て無事運用が始まりました!

Point2 ごみ収集車が走ったことがない

ごみの焼却処理をしていた当時から、町民の方はごみを施設まで持ち込みしてました。
都内でよくやっている、ごみ収集車による戸別収集をもともとやっていなかったため、ゼロ・ウェイストセンターに定期的に資源ごみを持ち込む、ことへの抵抗感が少ないのだと思います。

  • 生ごみは自宅で処理している
  • 資源ごみも長期保管のためにきれいに洗って乾かしている

ため、頻繁にゼロ・ウェイストセンターに通わなくてよい、というのもポイントですね。

Point3 葉っぱビジネス 「いろどり」の成功体験

こちらは、野々山先生も実感されていること、ということでお話しいただきました。


上勝町が葉っぱビジネスで全国に知られる町になると、いろんなテレビや新聞、雑誌などの取材が町に来るようになってきます。

  • 自分たちの取組みが、全国区で注目されている!
  • 自分や、友人、家族、親戚がインタビューされて、テレビや新聞に載っている!

という経験は、町のみなさんの「日本初」「新しい取り組み」も自分たちで達成できるという自信、成功体験になっています。

この成功体験が、日本初のゼロ・ウェイスト宣言 にもつながったとのこと。

正直、45分別ってもう 覚えられる数 超えてるし、洗ったり乾かしたりも 毎日のことだから大変ですよね。
テレビ取材のビデオを見たときも

『毎日 xxも分別するの大変じゃないですか?』(インタビュアー)

「・ ・ ・ (苦笑)」(取材受けているおばあちゃん)

というやり取りが印象的でした。わかるわー。面倒だよなあ。。。

ちょっと大変だけど毎日続けるための、モチベーション、めちゃくちゃ大事です。

Point4 地域コミュニティの強さ

上勝町では、町内に5つの地域があり、1年に1回 1Q 運動会 (いっきゅう うんどうかい)が行われています。1993年(平成5年)から行われているので、かれこれ30年続いているようです。

こちらの運動会では、各地域の総代のリーダシップのもと、全員で知恵を出し合い、地域の活性化や地域の困りごとを解決するアイディアを作ります。

できあがった企画には、町の予算もつき、地域の皆さんを中心に実現して、1位の座を5地域で競い合います。役場の予算や人での不足をうまく補って、住民の方の参加を促し、課題解決のスピードも上げる、というすばらしい取り組み。

こういった、各地区のコミュニティが、ゼロ・ウェイストの取組でも

  • 分別面倒だから、野焼きしちゃおうかな
  • やりたくないな

という人への働きかけや地域のサポートにつながっています。

現在、高齢などが理由で自分で資源ごみを持ち込めない方向けに、2か月に1回有志の方がお家を回り、回収をお手伝いされているそうです。

Point5 ちりつもポイント

こちらの写真は、野々山先生が ゼロ・ウェイストセンター で分別やリサイクルのしかたをお話してくれているところです。

で、帰ってきて気づいたのが、左側の

『 ちりつも Point 』

なんだろう?と思ってググったら、

ちりつもポイントキャンペーン 』~地球に ”良いこと” した人に ”良いこと” があります!~

ページを発見! 2020年3月から新しい取り組みのようです。町民のみなさんがポイントカードを持っていて、分別やごみをださない買い物をすることでポイントがもらえます。

  • ゼロ・ウェイストセンターで分別に協力する
    特定の8分別のうち、1種類=1ポイント でポイントがもらえる
  • 町内のお店でレジ袋を使わず買い物する
    「ノー・レジ袋ポイントカード」にスタンプを教えてもらう (ちりつもPoint への合算も可能)
    + お買い物1回につき1ポイント もらえる
  • 町内のお店で容器持参で買い物をする
    マイ容器を持ってお買い物をするとと「ノー・レジ袋ポイントカード」に3ポイントもらえる(同じく、ちりつもPointへの合算も可能)

ポイントを貯めると、キャンペーン商品と交換できます

手軽な 5p だと、紙紐ちゃん電動生ごみ処理用チップ など、びわこふきん は エコユーザーの間でも評価されている逸品ですね!

小中学校の体操服やジャージ (150p)は、購入すると結構なお値段だったりするので、お子さんがいる家庭はうれしいかも。

象印ゼロ・ウェイスト認証ロゴ入りボトル、ほしいです。

月経カップとか、セラミックコーヒーフィルター、おむつカバー、充電式回路、竹歯ブラシ、保存瓶、蜜蝋ラップ とか、ゼロ・ウェイストをめざせる商品がそろっていて素晴らしい。センスあるなー。



分別だけではなく、ごみを減らせる買い物のスタイルを提案していたり、ポイ活 で 取り組みを楽しくできるようにする工夫が満載です。

感想

あこがれの上勝町 ゼロ・ウェイストセンター。実際に現地に住む方にお話を聞け、現場を見学することができて感激もひとしおでした。

「ごみを資源に変えて、お金を稼ぐ

「取り組みを楽しく、ポイ活でモチベーション」

「我こそが、この町のゼロ・ウェイストを支えている!というプライド

すごく人のキモチに寄り添った運用のしくみや、職員の方・有志の回収ボランティアの方の顔のみえるサポートが印象的でした。

企業の方だけでなく、全国の自治体からも視察が絶えない上勝町の取組み。後に続く自治体も参考にできるヒントがたくさんつまっています。

小池知事!東京でもやりましょう。

~ ご参考情報 ~

ゼロ・ウェイストセンターWHY

2020年5月30日 (ごみゼロ)の日にリニューアルしました!

今回は止まれませんでしたが、ぜひHotel WHYにも宿泊したい。次回のチャンスを狙います。

リサイクルエリアの見学については、

毎日16:30よりスタッフによる施設案内を開催しております。(2日前までの事前予約制) 詳細は予約サイトをご覧ください。

https://why-kamikatsu.jp/faq/

とのことです。ご興味ある方はぜひ!

合同会社 パンゲア

今回講演をしていただいた、野々山先生の会社です。

今回ご紹介いただいた、

  • ゼロ・ウェイストに関する企業向けツアー、教育ツアー

    だけでなく、
  • 上勝町ならではの自然を満喫できるアドベンチャーツアー
  • クラフト体験
  • キャンプ、バーベキューなどなど、

    いろんなアクティビティーがあります

「ごみをださない」「ゼロからつくる」 ゼロ・キャンプ も楽しそうです。

ゼロ・ウェイストタウン 上勝

ちりつもPointの取組みなど、参考にさせていただきました! ブログ中の画像お借りしております。

上勝町のゼロ・ウェイストの取組みや、見学について一目でわかるWebページです。

には、視察・見学などの案内や、講演依頼などがまとまっているので、興味がある方行ってみたいな、話を聞いてみたい という方は必見です。

個人的にはですね・・・ 「上勝町に行く前に知りたい情報リンク集」> 上勝パラダイス宣言> とたどった時の、このページが好き♪

突き抜けている。

本日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございました!
ご意見、感想、新しいアイディアなど、なんでもコメントいただけると、ものすごくうれしいです。Have a nice and eco Day!

-おでかけ, よくしる!, 地球のしごと大学, 捨てないくらし