今回の先生は、新井章吾先生。海藻のスペシャリストとして長年、海の海底湧水の仕組みや藻場再生の研究をされてきました。海の中でいま何が起きているのか?山や森、河、地下水も含めた大循環の中で、豊かな海の環境を取り戻す方法とは?お伺いした内容を超サマリーでお届けします。
海底湧水って、何?
海底から、水が湧き出ているってご存じでしたか?(わたしは全く知らなかった。。。)
( ↑ 新井先生のYouTubeチャンネルより)
大抵この湧水は ”海水”らしいのですが、新井先生によると、海底湧水はこうやって沸いているらしい。
- 山や陸地に降った雨が地下にしみこむ(その時腐葉土を微生物が分解してできた鉄、マグネシウム、窒素、カリウムなどのミネラルや酸素も一緒に運ばれていく)
- しみこんだ水が地下水となって、海の下まで流れ込む
- 一部は不浸透層と呼ばれる、水を通しにくい岩盤の割れ目から海に湧く (この湧水は淡水、とても稀)
- 大部分は、地下にある岩盤の不透浸層に沿って沖の地下まで流れてきている。淡水が流れる圧力で海底にしみこんだ海水が、沿岸近くに湧き出てくる (今後要研究、先生の仮説含む)
こうやって海底湧水には、キレート化したミネラルが豊富に含まれ、豊かな藻場(もば)や生態系を育むそうです。
(キレート化:有機物やアミノ酸がくっついて海藻を含む植物などに吸収されやすい分子構造に変わる、ことらしい。キレート化についての参照はこちら)
- 沖縄のジュゴンの生息地 ジュゴンが食べたところも藻が早く再生することが分かっている。
- 大分県 カブトガニの産卵地 砂地から湧水が湧いていることが分かっている
- 南三陸 湾内での養殖 湾の中でも沿岸から沖に向かって海底湧水の流れるところでしかわかめやカキの養殖がうまくいかない
磯荒れ、磯焼けってなに?
日本沿海には豊かな藻場がひろがっていましたが、ここ数年で急激にその環境に変化が起こっているとのこと
磯荒れ
物理的要因によって海中の藻場や生態系が荒れること。
(例)陸地からの泥の流入で海藻が育たなくなる
河川から大量の泥水にのって有機物が流れ込むことにより、こんな現象が起きているそうです。
- 海水でのコロイド(海に流入した有機物が海水と反応して白いフレーク状になったもの)が増える
- バクテリアが繁殖してマリンスノー(漁師さんがいうヌタ)になり、海底に落ちていく
海底や海藻の上にヘドロが積もり、光合成できなくなった藻が死んでいったり、ヌタから発生したメタンガスや硫化水素が原因で周辺の生物が大量死する現象が起きているとのこと。東京湾の漁師さんによるとこういった現象も日常茶飯事になってきており、硫化水素につよい外来種のホンビノス貝さえもここ数年減ってきているとのことです。
宮崎県中部でも大量の藻場が消失していることがわかっています。1976年当時の調査では、海底に314ヘクタールの藻場が海底に広がっていたが、近年の調査では0.1ヘクタールに減っていることが確認されました。
対馬では鹿の食害で下草がなくなった地域から表土が海に流出し、アワビの幼生が岩に付着できないためアワビが減るといった被害も出ているそうです。
磯焼け
生物学的要因で、海中の藻場や生態系が荒れること。
(例) ある特定の生物が大量繁殖して、生態系が壊される
新井先生は日本各地海に潜って、調査、藻場の再生を手掛けてらっしゃいますが、近年海水温の上昇に伴って
- 暖かいところに住んでいた魚が、本州近海でも一年中暮らせるようになってきている
- アイゴなど海藻を大量に食べる熱帯系の魚が、海藻を食べつくす
などが原因で、日本各地の海底で藻場が急激になくなっているそうです。。。
講座では、
- 島根県の半島で海藻の一種である”あらめ”が魚の食害で根だけになった
- 富山県の沿岸でアイゴが大量発生して、水温が低い水深が深い海岸や、アイゴが入り込めない岩のスキマだけにしか藻が生えない
- ほかにも対馬、隠岐、五島などの島周辺でもこの3年ほど、”あらめ” ”かじめ” ”くろめ”などの藻が消失している
といった状況を、多くの動画や写真を使ってシェアいただきました。
磯荒れ、磯焼けを防ぐために、なにができるか?
新井先生からアドバイスいただいた、磯荒れ、磯焼けの防止方法、再生方法はこちら。
- 山や海岸沿いの木を間伐する。水と空気の通りをよくする。
人間が一度手をいれた森は、継続的に手を入れていかないと藪化と土壌の酸素不足によるグライ層化が進み、磯荒れの原因になる。
間伐を行い、水と空気の通りをよくすることで、土壌内の有機物が微生物によって分解され、地下を通って河や海底に湧き出してくる。 - 間伐材を商業利用する。温暖化の原因となる化石燃料の利用をやめる
アイゴなどの食害により藻場が減少している原因は、温暖化による海水温の上昇。冬場の水温で数十年前よりも1.5度上がっているため冬でも魚が活発に活動し、食害が拡大してきている。
温暖化防止のためには化石燃料の利用をやめるしかない。
今の技術を生かして、間伐材の切り出しや間伐材を利用した発電の効率を上げれば、石燃料に変わるエネルギー資源として生かすことができる。 - 水がしみこみ、しみだす道を確保する
コンクリートで護岸や側溝を固めていくと、土壌からしみこむ水が減って湧水量が減っていく。湧水が少なくなるとヘドロが積もりやすくなりアサリなどの海底生物が住めない環境になる。
現在はコンクリート製であっても、スキマをあけて水をしみこませる工法、護岸部分を金網と玉石で保護することで水をしみこみやすく、しみだしやすくする工法もある。
やれば東京湾でもハゼやアサリが戻ってくる。 - 藻場を食べてしまう魚を商業利用する
今回藻場を荒らす魚の例として挙げられていた”アイゴ”は、きっと皆さんもどこかで食べている”スクガラス”です。
アイゴの幼魚を塩漬けにしたもので、よく沖縄料理店ではお豆腐の上に乗ってます。食害魚とされている魚も地域によっては食料として有効活用できる。
まついの感想
海の湧水や海水の成分など、いままで知らなかったエリアで、先生からの豊富な知見をたくさん共有いただき本当に勉強になりました。
陸と海をまたがる水の大循環を復活させるという点では、土中環境の講義をしていただいた高田宏臣(たかだ ひろおみ)先生、流域経済圏を提唱されている橋本淳司先生のお話ともつながってきています。
ここ数年で被害が深刻化しているという磯焼け。海水温の上昇や、藻場を食べる魚の生活域拡大が続けば、こういった被害が北上していくという可能性も感じました。
「陸の環境を整えることで再生も可能。」という新井先生のアドバイスを生かし、早期に藻場復活のノウハウ習得していくことで、被害拡大を食い止めたいですね。
今日も最後まで読んでいただきどうもありがとうございました! Have a nice and eco Day!
~ ご参考情報 ~
新井章吾先生からの発信情報
新井先生の講演予定や活動の様子が発信されています。全国各地の企業やNPOの支援もされており、こちらのページのプロフィールからたどれます!レッツフォロー。
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